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われらアグリ応援団 第35回 「農村RMO」

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われらアグリ応援団 第35回 「農村RMO」

次世代のために挑む

 

「これは低気圧だろう」「これが台風かな?」

テーブルに広げた紙に、天気図マークを次々に貼り付けていく。

ここは富山地方気象台、ではない。富山市八尾地域の中山間地。黒瀬谷KIRARI活性化協議会の人たちが老若男女集まって、楽しそうに「天気図」をつくっていた。

土台になる大きな紙には、地域のさまざまな組織の名称が書かれている。地域の強みなら「高気圧」、弱みなら「低気圧」、新風を吹き込むのが「台風」といった感じ。連携に課題があれば「寒冷前線」の青くて細長いギザギザマークをくっつけていく。

この日行われていたのは、農村型地域運営組織(農村RMO)の将来ビジョンをつくるワークショップである。富山県内ではいくつか取り組みが始まっていて、黒瀬谷KIRARI活性化協議会はその一つ。農業者の組織と、自治会や社会福祉協議会などさまざまな関係者が手を携え、長く将来に続く地域づくりの実現を目指す。宮田好一協議会長は「今ならまだ、住民が結束して頑張ることができる。どうすれば持続可能な地域にできるのか、先入観なく頭をまっさらにして意見を出し合いたい」と言う。

ワークショップでは住民のみなさんが年代別、性別の5グループに分かれ、さまざまな組織の関係を「天気図」になぞらえて表現していった。楽しいゲームに見えて、表情は真剣そのもの。地域の課題を「見える化」し、解決に向けた取り組み案を次々に発表した。

実はこのワークショップでは「天気図」づくりの前に、もう一つ重要な場面があった。

持続可能な地域社会総合研究所の藤山浩所長による「人口予測」の解説である。

この地区ではUターンが増えるべき20代前半、なかでも特に女性層が大きく減少してバランスを崩し、4歳以下が急減しているという。藤山所長は、人口を安定させるために必要な移住世帯数についても予測した。新たに何人住めば、これからもやっていけるのか。ゴールが見えているということが、まずもって大切なのだという。

進学などで県外に出た女性層が、戻ってこないという現象は、黒瀬谷だけで起きているわけではない。濃淡はあっても富山県をはじめ全国の地方が抱える悩みであり、放置すれば、遠くない将来に危機的な状況を招く。背景には東京一極集中のひずみや、ジェンダーギャップの問題など日本全体が抱える幾つもの大きな課題が横たわっている。

効薬は見つかりそうもないが、黒瀬谷の取り組みを取材し、明るい光が差すような思いがした。次世代のために何ができるのか。住民自らが挑むこうした取り組みを、応援していきたい。

 

日本農業新聞富山通信部ライター 本田光信

 

▲地域の「天気図」に取り組む住民たち

 

▲現状や課題について話し合う参加者

 

▲課題解決に向けた案を発表する女性

 

▲地域活性化に向けた「天気図」