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われらアグリ応援団 第52回 「人生の不思議」 出会い大切に

たま吉くん
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われらアグリ応援団 第52回 「人生の不思議」 出会い大切に

バスケットボールのスター、八村塁選手と馬場雄大選手の姿が農協会館ホールのスクリーンに大きく映し出されると、この日の講師がステージに現れた。

富山市立奥田中バスケットボール部のコーチ、坂本穣治さんである。パワーポイントや資料を一切使わない昔ながらの「口演」が始まり、語りの魅力で聴衆をひきつけていった。

それにしても、なぜ世界のトップレベルで戦える選手がふたりも、ほぼ同時期に、公立中学校の部活動から輩出されたのだろう。富山県民のひとりとして誇らしく思いながらも、不思議でならなかった。会場に詰めかけた皆さんも同じ思いのようで、真剣なまなざしを壇上に注いでいた。

この奥田中の「奇跡の物語」は、教員ではない坂本さんが偶然の成り行きで、子どもたちにバスケットボールを教えることになる場面から始まる。内容に踏み込みすぎるとネタバレになるので詳しくは書かないが、坂本さんはどんな時も、八村選手をはじめ生徒たちに寄り添い続けた。しかも子どもと接する熱量が、中途半端ではない。子どもたちは彼の姿を通じて、「高い目標を持つ」ことや「一生懸命を楽しむ」ことの大切さを肌で感じ続けたのであろう。

八村選手について言えば、本人のたぐいまれなる天性の素質と努力の積み重ねが、NBAでの活躍につながったことは間違いない。

ただ、いかに優れた原石であっても、少年期に坂本さんというコーチや周囲の友人たち、バスケットボールと出会わなければ、その後の日々がなければ、輝くこともなかったはずである。人生の不思議というか、奇跡というものの秘密に、少しだけふれることができたような気がした。

さて、この日の講演は、富山県JAグループと県農協労、県協同組合協議会(事務局・JA富山中央会)が、協同組合シンポジウムのプログラムの一つとして企画したものである。ことし迎えた「国際協同組合年」にまつわる講演もあり、シンポは全体的に充実した内容だった。長年この仕事をしていると、わたし自身の気づきにつながる取材をさせていただくことも多い。

出会いは人に限らない。こうした学びや気づく機会もまた、出会いの一つであろう。

春。あたたかい光が窓辺に差し込む。

新たな年度もまた、ひとつひとつの出会いを大切にしていきたいとあらためて思う。

 

日本農業新聞富山通信部ライター 本田光信

 

▲思い出を語る坂本さん

 

▲熱心に耳を傾ける聴衆