われらアグリ応援団 第31回 「学びの姿勢」
われらアグリ応援団 第31回 「学びの姿勢」
気前よく質問しよう
○JAグループの新人職員たちが、富山市吉岡にある県農業研究所の試験圃場(ほじょう)を歩いていた。区画ごとに整然と広がる田んぼや畑では、米の新品種を育てたり、病害虫対策を研究したりと、さまざまな試験を展開している。
○講師に先導された新人たちが、ある圃場の前で立ち止まった。
○取材カメラのファインダーをのぞく。
○おもしろい動きをしている新人男性の姿が目に入り、思わずシャッターを切った。
○彼は、何かを講師から受け取ると、手のひらに載せてじっと観察している。
○このエリアは、環境にやさしい肥料を開発するための試験圃場。
○手に載せたのは、おそらく「肥料を包むプラスチックの殻」であろう。カエルの卵のような形をしているが、似ても似つかぬ代物で、海に流れ出すと汚染の原因になるという。
○新人男性はそれを手のひらに載せたまま、まわりの人たちにおすそ分けするかのように、見せて回った。興味津々の様子で、純粋に学びを楽しんでいるように見えた。
○名前を尋ねると「JA福光の久保太一です」と、さわやかに答えてくれた。
○その調子で、これからも頑張ってほしいものである。
○圃場視察に先立つ「農機の見学」の場面では、同じJA福光の瀬戸裕憲さんが、自動で航行するドローンについて質問し、技術面ではなく「それ、おいくらですか」と価格を尋ねて場をなごませる一幕もあった。質問は肩ひじ張らず、そんな感じがよいのである。
○たくさんの人が集まる場では、多くの人が「空気」を読んで発言をためらう。失敗したくないとか、つまらないことを言うやつだと思われて損をしたくないという「ケチくさい気分」に支配されがちで、目立つことをしたがらない。
○だが、長い目で見れば、「学びたい」とか「知りたい」気持ちに正直に行動できる人は、決して損をしない。仮にうまくいかなかったように見えても、そういうことの小さな積み重ねが未来を切り開く原動力になり、財産となる。
○損をしたように見えて、実は得をするのだよ。
○この研修は「富山県域担い手サポートセンター連絡協議会」が主催し、JA富山中央会や全農とやま、共済連富山、農林中央金庫富山支店の先輩たちが、協力体制を組んで運営した。日本農業新聞や家の光協会までもが応援に駆け付けるという手厚い布陣である。JAグループは研修体制がしっかりしているので、これから先もこのような機会はきっと何度も訪れる。失敗してあたりまえ。気前よく、じゃんじゃん質問しようではないか。
日本農業新聞富山通信部ライター 本田光信
▲プラスチックの殻に興味津々の新人職員
▲運営を支えるJA富山中央会などの職員
▲富山県農業の特長などを学ぶ新人職員
▲農機に見入る参加者